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「私のTwitter社会論」 – Twitterは変化を起こす最初の一歩には成りうる。けれどその力はまだまだ小さい。

@tsuda さんの「Twitter社会論」読了。私が日常的に使っているTwitterが社会にどのように広まり、またどのような影響を持つようになっていたのかが分かりやすくまとまっていた。自分以外の人達がどういう風にTwitterを使っているのか、そういう事に関心がある人にお勧めの書籍です。

ではここから本書を読んで考えさせられた、また私がTwitterを日々使っていて考えている事、「私のTwitter社会論」を記していきます。

私は2年前からほぼ毎日@HAL_JのAccountでTwitterを使い続けて、現在34,000回以上Tweetしている。私にとってはTwitterはEmail同様に欠かせないモノだ。でも、まだ他の多くの日本人にとってはそれほど重要なものではないのだろうなと、書籍を読みながら改めて認識した。

Twitterはまだまだ敷居が高い。私がFollowした人達を見ていても、Accountを作っても続かずに辞めてしまう人がけっこういる事に気付く。TwitterはEmailほど気楽に使えるモノではないと常々感じている。そしてTwitterやblogの事だけを考えている時には意識しなかったが、著書「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」の出版を通じて現実世界へのInternetの影響度を考えるようになった。TwitterやInternetの影響力というのはまだまだ小さいものであると認識するようになった。

blog「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」は「2010年にはてなブックマークを4,400以上獲得して年間はてブ獲得数2位になった」けれど、これも見方を変えると「たったの4,400人がブックマークしただけ」。現実への影響度を考えると「たったの4,400人」。「たったの4,400人」では影響は一部の人達を除いてほとんど全くない。現実への影響はごくごく限られている。Twitterやblogを通じて何かを伝えようとすると一部の先進的な人達には伝わるかもしれないが、その他の大多数の人達には伝わらない。その他大勢の人達に伝えるためにはTVや新聞といった一般の人向けの媒体が必要だなと強く感じた。

書籍「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」の内容はblogにて内容の約8割を公開しているので、「blogで読める人はblogで読んだら良い」と考えている。でも「blogで長文を読むという習慣を持っている人の数は思いの外に少ない」ので、多くの人に読んでもらうためには書籍化は欠かせない。

私のblogと同様に「英語上達完全マップ」も書籍の内容をWeb上に公開している。私は書籍を読んだ時に「なんでWebで公開している内容をわざわざ書籍にするんだ?」と当時は不思議に思っていた。でも、今なら理解できる。「書籍という媒体でないと多くの人に読んでもらえないから書籍化した」のだと言うことを。

私はblogの書籍化を最初は「電子書籍でお願いします」と希望していたが、これも今思うと想像力に欠けていた。「blogで長文を読む人が少ないのと同様に、電子書籍で読書する人も圧倒的に少ない」ということを去年の自分は分かっていなかった。(電子書籍の発行部数詳細は書籍「電子書籍元年」にDataがあるので、興味がある人はこの書籍を読んでみてください)

Twitter社会論」の中で「Twitterはキャズムを越えた」(勝間さんが発言していた)とあったが、私はまだ超えていないのではと、感覚的だけどそう思う。Twitterを継続して使っている利用者は、登録した人の1割未満なんじゃないかなと、私の感覚的にはそれくらいの割合かなと感じています。

そして、私がFollowしている人達の中には、「現在ある問題をなんとかしたい」という思いを抱く人達が(私も含めて)けっこういる。彼らの言説がTwitterやblog上で評価されていても、現実でも評価されるかといったらそうではない。彼らの考えが実現されるためには「Twitterの世界だけに留まるのではなく、その他大多数の人達がいる世界へ伝える必要がある」。TwitterやblogといったInternetの世界だけじゃ駄目なんだよなと最近感じる事が多い。

ここまで「Twitterを含めたInternetの力はまだそれほどではない」「Twitterだけでは世間の大多数の人達には伝わらない」と記してきた訳だけど、「Twitterは変化を起こす最初の一歩には成りうる」と私は考えている。

例えば、Twitterにある考えが現実に伝わる経路を一つここで紹介する。

  1. Twitterで注目を集める。
  2. すぐに流れさってしまうTwitterではなくblogにまとめる。
  3. blogがはてなブックマークなどのSocial Book Markingやその他Social Networking Serviceで注目されるようになる。
  4. blogの実績を示すDataを準備して、出版社に書籍化の依頼をする。そして、書籍化する。
  5. AmazonなどのNet書店で書籍が注目されてランキング入りする。
  6. Net書店で注目されている事実を現実にある書店に伝えて、書店で重点的に扱ってもらえるように営業する。
  7. 現実の書店でランキング入りしたら、その事実をTVや新聞といった影響力のあるMass Mediaで取り扱ってもらえるように宣伝する。

以上のような経路を辿る事が出来ればTwitter発の考えを現実に波及させることが出来る。このように「Twitterは変化を起こす最初の一歩には成りうる」と私は考えている。

ただ、最後の段階「7.TVや新聞で紹介される」という所まで辿りつけるものというのはそうそうないと考える。特に「未知もの」や「分かりにくいもの」がこの段階まで辿りつくのは想像できない。@sasakitoshinaoさんと昨年末のDiscover21のPartyで話していて『ネットがあれば履歴書はいらない』が「内容が新しすぎてあまり売れなかった」と@sasakitoshinaoさんが言っていたのがその一例。また、大多数に受け入れられるためには意見・考えに急進的なモノを含んでいると難しい。反発が激しくなる。

他にも例を挙げて考えると、「Social Mediaを使った選挙活動」や「地域通貨」といった新しい考え方は大衆には伝わりにくいし、理解されにくい。だから私は今後数年間はこれらはMass Mediaで取り上げられて注目される事はないだろうと予想している。こういった先進的な考えは大多数の人達に伝わるのを期待するのは止めた方が良い。大多数の人達に伝えるのではなく、一部の先進的な人達(各集団の指導者達)を狙って情報を発信した方が良い。

むしろそういう先進的な考えを発信している人達は「別に大多数の人達に理解される必要なんてないよ!」と考えるかもしれない。まあ個人で生きていく分にはそれでもかまわないと思う。が、「自分の考えで社会を動かしたい」と考えている人の場合は「最終的に大多数の人達に伝えるためにはどうすれば良いのか」を意識しないといけない。

あと企業としては「一部の先進的な人達」だけを相手にしていてもそれほど利益は拡大できないし、利益を維持するのも難しい。大規模組織の維持や売上の拡大を狙う企業は「大多数の普通の人達」にも顧客になってもらわないと大きな利益は見込めない。だからそういう企業は「大多数の普通の人達」を意識せざるをえないことでしょう。

他にも例を挙げると、Discover21の編集者と「1万部売れる書籍」についての企画案を練ってみたが、これが難しいったらない。多くの人に評価される書籍というのはなかなか想像できない(日本の昨年の1年間での書籍の発行部数は約8万部。そのうちの99%の書籍は1万部も売れない。※この事を裏付ける詳細Dataを現在探しています。見つけられなかった…)。多くの人に受け入れられやすいと私が想定した英語学習の本でも売れる部数は限られている(※参考 書籍「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」は3刷で2万部)。「1万部売れる書籍」の企画は本当に難しいと思った。

私の属性がそうであるがゆえに、私のFollowerには英語学習者が多い。そしてTOEICは860点以上の人もけっこういる。でも、世間的には「英語の学習は学校を卒業して以来まったくしていない」という人の方がはるかに多い。Twitterをやっているとこの事をついつい忘れがちになる。また昨年最も売れた書籍は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」ですが、これも「200万部」が売れただけ。「200万人」は日本の人口から考えると少数派です。本屋に行く人達は忘れがちだけど、世の中「本を読まない人の方が多数派」です。

私はTwitterがあったおかげで書籍まで出したが、それがゆえにTwitterやInternetの限界について考えるようになった。そしてまた「世の中を変えたい」と考えても、それがどれだけ難しいのかも考えるようになった。

あと10年も経てばTwitterを含めたInternet Mediaの力は今よりもずっと増しているとは思いますが、現状ではInternetはTVや新聞には全く及ばないMediaであると感じています。一昨年からTwitterを使い続けて、また書籍を出版して、こんなことを考えるようになりました。

Twitterは変化を起こす最初の一歩には成りうる。けれどその力はまだまだ小さい。これが今の私が書ける「Twitter社会論」です。

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Comments:2

ra-mi 11-01-09 (日) 20:04

この記事にはHalさんの経験無しには書けない考察が詰まっていて非常に興味深いと感じました。特に「書籍とネットメディアの影響力比較」、「マイクロな感覚からマクロな視点に立った時に見える現実」、そして「日本におけるTwitterの可能性と立ち位置」が分かりやすくまとまっていて、非常に参考になりました。

dson1975 11-01-09 (日) 20:36

HALさんの意見と同じ事は、常々感じています。
SNSの影響力は、まだまだ未成熟で、Internetに過度に期待するのは危険だと考えています。

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