- 2010-11-22 (月) 18:07
- 20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ
さよなら試験勉強のための英語。Lang-8で日本人以外の価値観を知る。そして広がる善意の輪
この記事では相互添削Service、Lang-8の知られざる利点について紹介します。
最初に私がLang-8で交流のあった英国の大学生の話をします。彼はLang-8を始めた当初は日本語の勉強をはじめたばかりでした。ですから当初私は彼の日本語が何を言いたいのか分かりませんでした。そのため「日本語と一緒に英語も併記したほうがいいよ」という助言をしたくらいです。英文の助けがないと彼の日本語は理解できない、それくらいにひどい日本語でした。
しかし、彼はそれからも継続して日本語で日記を書き続けて、日本語の作文能力をめきめきと上達させました。私が米国に行く頃には彼の日本語は英文の補助がなくても理解できる水準まで到達しました。彼はわずか数ヶ月の間にまったくの初心者から十分に実用的な水準まで日本語力を高めることに成功したのです。そしてつい先日久しぶりに彼の日記を見ると、彼の日本語はとてつもなく上達していました。わずか1年でここまで上達するものなのかと正直驚いています。しかも彼はまだ日本に来たことがありません。
学んだことをとにかく実践する。そしてたくさんの失敗をする。でもその失敗を恐れずに、そして失敗から学んだことをまた実践してどんどん日本語能力を向上させていく。これが彼の学習方法です。私は彼が実践しているこの勉強方法こそが正しい語学の学習方法ではないのかなと思うようになりました。とにかく言語を「道具」として使って人々と意思疎通をする。もちろん日本人ではないので完璧な日本語ではありません。第2言語としての日本語、なんとなく不自然な日本語です。でもその日本語は十分に理解できる日本語です。
彼の勉強法を見て私は自身の中学・高校時代の英語の勉強を思い返しました。学校にいた6年間で自分はどれだけ英語を「道具」として使ったのだろうかと。試験勉強以外のために英語を使ったことがあったのだろうかと。また私は大学受験が終わってからはTOEICの試験勉強をしました。でもこれも結局は「読む」「聞く」という受身の勉強、そして試験勉強でした。
こういう私がはじめてLang-8で日本語を学ぶ外国の人たちの日記を読んだときの衝撃をお伝えします。「間違いを気にせずにどんどん自分が学んだことを実践している人たち」を見たことで自分の価値観が一変したのです。
当時の私はといえば、Twitterに英文を投稿するのにも「自分の間違いを指摘されたら嫌だな……」と思って、投稿をためらっているような人間でした。なんでここまで自分は「英語を話す際に間違いを犯してはいけない」「失敗してはいけない」と思っていたのか、いま思うと不思議です。
以前の私は「第2言語」という概念を知りませんでした。そして英語を話すのなら「文法的に正しい英語を話さないといけない。そうでなくては話すべきではない」「Native English Speakerのようにペラペラと話さなければいけない」という考え方に縛られていました。この考えを壊してくれたのがLang-8です。Lang-8で日本語を学ぶ外国の人たちから、以下の大切なことを教えてもらいました。
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第2言語は完璧ではなくてもよい。聞き手・読み手に理解される水準まで到達すればそれで十分
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試験勉強のためでなく、実際に使うために学習すること
そしてまたLang-8を使ったおかげで、私は日本の英語教育のいびつさを知りました。Lang-8以外でも同様の経験をしたことがあります。米国で出会った人たちの中には、1年くらいしか英語を勉強していないのにもかかわらず、6年間も英語を学んだ日本人よりも流暢に話す人たちがいました(彼らは欧州の人たちで、英語と似た母語を持つ人たちではありますが)。ふつう6年間も英語を勉強していれば、たいていのやりとり(書くこと、話すこと)は英語で出来るようになっているはずです。それなのに日本人の場合は難しい英語長文は読めるのに、ごく簡単なやりとりもできないといういびつな英語力しか身につきません。これはやはり異常と言わざるをえません。
日本以外の国の語学教育がどのようになっているのかを考えさせるきっかけを与えてくれたLang-8には感謝しています。Lang-8を使えば英語を学習できるだけでなく、こういった日本以外の価値観に触れることができます。
私が英語が添削されるということのほかにLang-8を勧める理由はこれです。Lang-8で日本人以外の人たちとぜひ交流してください。そして日本の価値観が唯一の正しい価値観ではないことに気づいてください。
もうひとつ、Lang-8の素晴らしい仕組みについて紹介します。私がLang-8で感心している点は「人々の善意を引き出すための手段がうまく仕組み化されている」ということです。添削をする人たちはそこに金銭のやりとりはないにもかかわらず、積極的に添削活動を行っています。金銭を使わずに人々のやる気を高めるというのは実はすごいことなのではないかと、Lang-8利用当初から感心し続けています。
世の中には金銭をもらっていてさえ嫌々仕事をしている人がいます。そういった世間一般とLang-8を比較するといろいろ興味深いことが分かります。Lang-8では金銭的な報酬はもらえません。けれど添削をした人たちから「感謝」されて、またその感謝の結果、自分が投稿した文章が添削されます。この仕組みは本当にうまくできていると思います。
私が最近考えているのは「人は誰でも自分が持っている能力を使って、他の人に貢献をしたがっているのではないか」ということです。私は残念ながら日本においては、生き生きと楽しそうに仕事をしている人よりは、嫌そうにお金のためだからと愚痴をこぼしながら働いている人たちを多く見てきました。
一方、Lang-8では日本人が「無償で」「喜んで」日本語学習者の添削を競うようにしている現状を見ています。Lang-8には現在の日本社会に欠けているものがあるのではないのかと今は考えています。
そしてまた、人々の善意を引き出す仕組みは日本人以外の学習者にも同様に当てはまっていると思います。Lang-8というひとつのWeb Serviceによってこの善意の輪がどこまで広がるのか、10年後にはどうなっているのか、それを考えるとワクワクします。
このLang-8の善意の仕組についてさらに詳しいことを知りたい方には次の書籍をお勧めします。
- 日本語書籍 『グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』(シャーリーン・リー、ジョシュ・バーノフ著、翔泳社)
- 英語書籍 『Groundswell: Winning in a World Transformed by Social Technologies』(Charlene Li, Josh Bernoff著、Harvard Business School Press)
英語書籍はKindleとaudibleに対応しています。
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